顔面神経麻痺
Facial paralysis, Bell's palsy
顔面神経麻痺の症状と原因 |
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顔面神経麻痺とは、顔面筋の運動麻痺によって起こる症状です。鍼治療では中枢性(脳などの中枢神経)ではなく末梢性顔面麻痺が対象となります。末梢性の運動麻痺の原因は、顔面神経が走行する顔面神経管が何らかの原因により圧迫や損傷を受けることで麻痺症状が現れると考えられています。末梢性の顔面麻痺症状を呈する代表的な疾患としてベル麻痺(特発性顔面麻痺)とRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群が知られています。
ベル麻痺 |
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ベル麻痺は前触れもなく突発的に麻痺症状が現れる疾患です。顔面神経麻痺の70%を占め多く見られるものであり、過労やエアコンの冷風、冬季の寒さによる寒冷暴露、心労、睡眠不足など身体的ストレスによる免疫力低下によって、単純疱疹(単純ヘルペス)ウイルスが活性化することが原因と考えられています。ヘルペスウイルスの再活性化は過労やストレスと密接に関係しています。
症状は口角が下がって唾液が垂れる、まぶたが閉じないなどの症状が突然始まり、約48時間で症状がピークに達します。通常であれば適切な処置により改善、治癒しますが、顔面神経の麻痺症状が後遺症として残る場合もあります。
Ramsay Hunt(ラムゼイハント)症候群 |
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Ramsay Hunt症候群は、帯状疱疹、水痘ウイルスなどのヘルペルウィルスが何らかの原因により再活性化することにより耳介周囲の帯状疱疹、顔面神経麻痺、耳鳴・難聴・めまい等を特徴とする疾患です。Ramsay Hunt症候群の場合、神経障害の症状が重く、麻痺が残るなどの後遺症のリスクがベル麻痺に比べて高い特徴があります。
外傷性麻痺 |
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顔面部の外傷により運動神経が障害され表情筋の運動が阻害される場合があります。交通事故、スポーツ外傷、労働災害、手術などにより顔面神経管の切断、圧迫によって麻痺が発症します。外傷性の顔面神経麻痺では、外傷を受けた直後に発症することもありますが、数日後に発症する場合もあります。
顔面神経麻痺の主な症状 |
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- 額にしわを寄せられない
- 眼を閉じられない
- 口角が垂れ下がる
- 口笛がふけなくなる
- 口角からよだれが垂れる
- 麻痺側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じる
- 麻痺側の舌の前方3分の2の味覚障害
- 眼が閉じにくいため、角膜が乾燥しやすくなる
評価項目 | 正常 | 不完全麻痺 | 完全麻痺 |
安静時 | |||
顔のシワ寄せ |
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弱閉眼 | |||
強閉眼 | |||
片目つぶり | |||
鼻翼のふくらませ | |||
頬のふくらませ | |||
口笛運動 | |||
「イー」という口 | |||
口をへの字に曲げる |