痛み,不妊,音楽家の鍼灸治療
100年の歴史 鍼灸専門
広済鍼灸院 
東京都港区元麻布2-1-21
(中国大使館隣)
ご予約: 03-3445-0887
痛み,不妊,音楽家の鍼灸治療【100年の歴史 鍼灸専門】  東京都港区元麻布,広尾,六本木 
                                                    ご予約:03-3445-0887
 
診療時間:9:00-13:00, 15:00-18:00, 休診日:木曜日 
 

音楽家のための専門的な鍼治療

 音楽家とスポーツ選手の身体活動は比較対象にされる場合が多く、両者とも最高のパフォーマンスを引き出すために、身体能力の限界まで速く、かつ複雑な筋の協調運動を行うといった共通点をもっています。手指や前腕の特定の筋を使うことが多い演奏運動では、スポーツのように筋や心肺機能への負荷が少ないことから、筋の疲労を自覚することが遅れがちになることがあります。そのため、フィジカル面でのケアが十分に行われていない場合、筋や神経の疲弊が進行した状態となっていることがあり、これらは筋や神経の障害に発展するケースが多く見られます。 

音楽家のジストニアに対する当院の鍼治療の特長

 当院ではピアニストをはじめ、管楽器、ギター奏者等、音楽家への治療実績が多く、多くの改善効果を上げております。音楽家のジストニアは個人の演奏歴や使用楽器、演奏時の姿勢など患者様ごとに 多様性を持っています。そのため、一様な治療ではなく各個人の特性に対応したのアプローチが必要となってきます。
 当院ではジストニアを高度な運動に伴う筋または神経の問題と捉え、神経科学的な面と東洋医学的な面を融合したより効果的な鍼治療を行っております。
 治療に際しては、筋や神経の病的な興奮部位を探索する測定機器を使用した精度の高い施術を行います。フォーカルジストニアの発症には、外傷歴や頚部筋の過緊張のみならず、精神的なストレスも関与している場合もあり,手指や前腕部といった局所だけではなく全身の状態を改善するための東洋医学的な治療も行っております。書痙や管楽器奏者のアンブシュア・ジストニア(口唇ジストニア)にも対応しておりますのでお気軽にご相談ください.

鍼治療を行う前には演奏時の姿勢や動作を確認後、施術を行っております(ピアノとギターを設置しております)。
下記のリンクは当院院長が発表した音楽家のジストニアに関する資料です。
音楽家のフォーカルジストニアに対する鍼治療の効果  (日本東洋医学雑誌 巻: 66 号)
音楽家のジストニア(「医道の日本」2018年1月号)

 以下の疾患が音楽家に多く発症する傾向があります

  • 局所性ジストニア(フォーカルジストニア)
  • 使い過ぎ症候群(オーバーユース)
  • 絞扼性神経障害
  • 反復性巧緻障害
  • 上腕骨外側上顆炎
フォーカルジストニア (musician's cramp)

音楽家におけるフォーカルジストニア(Musician’s dystonia, Musician’s crump)は、演奏時に不随意な筋活動が生じるために、演奏行為に支障をきたす病態のことをいいます。(音楽家の約10%が罹患しているとの報告もあります)
 症状の特徴は、例えばピアニストの場合、打鍵時に速く指を動かしたり、指に力が入にくくなり垂直方向への打鍵運動が思うようにできない等の症状を訴えることがあります(巧緻動作障害)。
 フォーカルジストニアは、演奏動作以外では症状が全く現れないことも多くあります。
 

演奏時における拇指の屈曲 第3指の巻き込み 第3,第4,5指の屈曲症状 楽器演奏は正確さとスピードを伴った複雑な巧緻運動を行う必要があるため、筋や神経系にかかる身体的なストレスは非常に大きなものになります。

原因

 フォーカルジストニアにはいくつかの原因が考えられていますが、楽器演奏にみられるような手指の巧緻動作を長期間反復することが発症の原因と考えられています。演奏運動のような特定の動作を過剰に反復すると、神経伝達機能に負荷がかかることによって伝達系に問題が生じることが知られています。
 神経の伝達系とは、例えて言うならば、配線の中を電気が流れるようなものであり、電流では一定量を超えるとショートしてしまいますが、神経-筋の伝達系も同様にオーバーユースや十分な休息やケアを行わない状態が慢性化すると、演奏時に作用する筋の収縮に拮抗する筋運動のタイミングが障害され、協調動作ができなくなることがあります。
 また、神経伝達のオーバーユースは脳の可塑性に変化を与えることもあると言われています。脳の「可塑性」とは、「弾性」の反対の意味を持つ言葉で、力や負荷が加わると元に戻らずそのままの形態を保つ状態を意味します。スポーツや音楽では難しい技術を習得する場合、何度も練習することで特定の動きを習得しますが,これは脳の神経細胞が変化することで習得できます。一度変化した神経細胞は、反復練習によってその形態を維持することで、習得した技術は自分のものとなりますが、反対に身体的に負担のかかる動きのクセなども同じ経緯で習得してしまうことがあります。クセを治すことが容易ではないのはこの理由によります。

フォーカルジストニアの症状分類

 フォーカルジストニア症状の程度を評価する場合において、Tubiana scaleという評価方法を用いることがあります。当院でも症状の把握や鍼治療の効果測定のために、Tubiana scaleや独自の評価表を用いることがあります。手に違和感をお感じの方はフォーカルジストニアの早期発見にもつながることがありますので、Tubiana scaleをご参考ください。この評価表ではフォーカルジストニアのレベルを

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6段階(0~5)に分類しております。Tubiana scaleにおける手の違和感がレベル2、または3に該当する方に多く見られる傾向がありますが、自分の症状が手の問題ではなく、 演奏の技 術的問題であると思い込み練習を過度に行った結果、症状を悪化させてしまうといったケースが見受けられます。そのため来院される多くの方は症状が進行し、レベル1の症状をお抱えになっている場合が多く見られます。フォーカルジストニアは早めの治療が効果的です。手に違和感をお感じの場合はご相談ください。

フォーカル・ジストニア 西洋医学における治療法

 主に異常な筋収縮を起こしている筋に対して行う治療法には以下のものがありますが, 神経疾患には原因が不明なことが多く, 医学的な対応が難しいとされています.
 また,以下の治療法には有効な疾患もありますが, 高度の巧緻性を要する演奏行為には支障をきたすことも報告されており, 決定的な効果があるとは限りません.
・ボトックス(ボツリヌス注射)
・MAB(muscle afferent block)療法
・定位脳手術
・反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS ) 

 来院者楽器別の内訳

   来院者楽器別の内訳
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音楽関連来院者の楽器別の内訳です.ピアノが最も多く全体の約半数の54%を占めていました.また、ギター(ロック,クラシック)が20%,管楽器(クラリネット,フルート,サックス)が15%であり、その中には和笛も含まれております.ヴァイオリンの来院者は8%ですが,左手,もしくは右手に症状の出るケースが見られました.少数ですが打楽器(ドラム、和太鼓やパンデイロ)の演奏者もお見えになっております.

フォーカルジストニア発症前の傾向(広済鍼灸院調べ)

  故障危険度チェック
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年間を通して多くの音楽関係の方が広済鍼灸院には来られますが,問診時に練習スタイルや日常生活の状況についてお聞きしますと,多くの方から類似した回答を得ることがあります.
 今までの問診からの回答を下記の8項目にまとめてみました.これらのうち少なくとも4項目以上当てはまる方は何らかの身体的故障を起こしやすい傾向が考えられますのでご注意ください. 

「良い姿勢」とはー音楽家としてのキャリアを長く保つためにー

 ほとんどの演奏は主に上肢を用いて行われますが, その上肢の運動を安定させるには胸郭や脊椎の 骨格筋が重要なはたらきをしています. 骨格や筋はすべて互いに影響をしあっており,これら の運動に過度の緊張や負荷がかかりすぎるこ とが
障害(傷害)の原因となります.
このメカニズムはスポーツにおけるスポーツ外傷と同じように発生します。「良い姿勢を保つことが大切である」といわれますがその「良い姿勢」とは何でしょうか?演奏家にとっての「良い姿勢」とは骨格筋にかかる機械的なストレスを最小限にしながら, 演奏における反復運動に負担をかけない姿勢です.
 しかし,個人個人の骨格や体質が異なるように理想的な姿勢も一様ではなく、各演奏者にあった姿勢があります.そのため,習慣となった悪い姿勢を直ちに矯正することは難しいのが現状です. 演奏家の誰もが経験していることですが, 優れたパプォーマンスを引き出す瞬間は無意識の状態に陥ることがあります. 普段から良い姿勢を保つことを心がけていないと悪い姿勢(身体にストレスのかかる姿勢)を体が認識してしまい, その状態が継続することで演奏技術に悪影響を与える疾患の原因となる場合があります. 当院では演奏姿勢のチェックを初診時に導入しておりますが, 演奏家としてのキャリアを長く保つためにも定期的に第三者の目からチェックしてもらうことが必要です.

フォーカル・ジストニアの鍼灸治療を受けられた方からのお声

(患者様からのメールやお手紙の内容です。プライバシー保護のために一部内容を変更しました)
先週診ていただきましたKです。大変嬉しいお知らせで、あの時見ていただいた事がきっかけであれよあれよという間に右手の不具合に劇的な改善が見られまして、自分の手や指の使い方を見直した結果、この10年間の苦労と辛酸が嘘のように、引きつれが取れていき、週末の演奏ではやっと昔の自由を右手に取り戻しまして、久々に演奏する喜びを感じながらの演奏となりました。お客様にも喜んで頂き、自分にとって記念すべき週末となりました。これもひとえに先生の施術のお陰と心から感謝致します。勿論長い間気付かずにつけてしまったよくないフォームに起因する、かすかな右手の引きつりは少しはあるものの、驚くべきことに、これまでとは逆に、練習する度にその引きつりがなくなっていき、これと言う理想のフォームといいますか、動きや力配分に近付きつつあります。本当にありがとうございました。今後もこの調子で、いい方向にいい方向にと流れを向けて行きたいと思っています。 

 

今日はご報告があり連絡させていただきました。治療していた指がだんだんと回るようになり、定期的な演奏が増えることになりました。少しずつですが地元の演奏活動の仕事も入り、急遽入ってしまった短期集中の生徒さんのレッスンを毎日のようにしています。東京に行ける時間がなくなってしまい、とても残念ですが、おかげさまでなんとか充実した日々を送っています。先生には一番辛い時期から手のことはもちろんの事、精神的なことも含め、本当によく相談に乗って頂き、誠に感謝しています。