音楽家のための専門的な鍼治療
音楽家のジストニアに対する当院の鍼治療の特長
当院ではジストニアを高度な運動に伴う筋または神経の問題と捉え、神経科学的な面と東洋医学的な面を融合したより効果的な鍼治療を行っております。
治療に際しては、筋や神経の病的な興奮部位を探索する測定機器を使用した精度の高い施術を行います。フォーカルジストニアの発症には、外傷歴や頚部筋の過緊張のみならず、精神的なストレスも関与している場合もあり,手指や前腕部といった局所だけではなく全身の状態を改善するための東洋医学的な治療も行っております。書痙や管楽器奏者のアンブシュア・ジストニア(口唇ジストニア)にも対応しておりますのでお気軽にご相談ください.

※ 鍼治療を行う前には演奏時の姿勢や動作を確認後、施術を行っております(ピアノとギターを設置しております)。
下記のリンクは当院院長が発表した音楽家のジストニアに関する資料です。
・ 音楽家のフォーカルジストニアに対する鍼治療の効果 (日本東洋医学雑誌 巻: 66 号)
・ 音楽家のジストニア(「医道の日本」2018年1月号)
以下の疾患が音楽家に多く発症する傾向があります |
---|
-
局所性ジストニア(フォーカル・ジストニア)
-
使い過ぎ症候群(オーバーユース)
-
絞扼性神経障害
-
反復性巧緻障害
-
上腕骨外側上顆炎
フォーカルジストニア (musician's cramp) |
---|
音楽家におけるフォーカルジストニア(Musician’s dystonia, Musician’s crump)は、演奏時に不随意な筋活動が生じるために、演奏行為に支障をきたす病態のことをいいます。(音楽家の約10%が罹患しているとの報告もあります)
症状の特徴は、例えばピアニストの場合、打鍵時に速く指を動かしたり、指に力が入にくくなり垂直方向への打鍵運動が思うようにできない等の症状を訴えることがあります(巧緻動作障害)。
フォーカルジストニアは、演奏動作以外では症状が全く現れないことも多くあります。
楽器演奏は正確さとスピードを伴った複雑な巧緻運動を行う必要があるため、筋や神経系にかかる身体的なストレスは非常に大きなものになります。
原因 |
---|
フォーカルジストニアにはいくつかの原因が考えられていますが、楽器演奏にみられるような手指の巧緻動作を長期間反復することが発症の原因と考えられています。演奏運動のような特定の動作を過剰に反復すると、神経伝達機能に負荷がかかることによって伝達系に問題が生じることが知られています。
神経の伝達系とは、例えて言うならば、配線の中を電気が流れるようなものであり、電流では一定量を超えるとショートしてしまいますが、神経-筋の伝達系も同様にオーバーユースや十分な休息やケアを行わない状態が慢性化すると、演奏時に作用する筋の収縮に拮抗する筋運動のタイミングが障害され、協調動作ができなくなることがあります。
また、神経伝達のオーバーユースは脳の可塑性に変化を与えることもあると言われています。脳の「可塑性」とは、「弾性」の反対の意味を持つ言葉で、力や負荷が加わると元に戻らずそのままの形態を保つ状態を意味します。スポーツや音楽では難しい技術を習得する場合、何度も練習することで特定の動きを習得しますが,これは脳の神経細胞が変化することで習得できます。一度変化した神経細胞は、反復練習によってその形態を維持することで、習得した技術は自分のものとなりますが、反対に身体的に負担のかかる動きのクセなども同じ経緯で習得してしまうことがあります。クセを治すことが容易ではないのはこの理由によります。
フォーカルジストニアの症状分類 |
---|
フォーカル・ジストニア 西洋医学における治療法 |
---|
・ボトックス(ボツリヌス注射) |
---|
・MAB(muscle afferent block)療法 |
・定位脳手術 |
・反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS ) |
来院者楽器別の内訳 |
---|
フォーカルジストニア発症前の傾向(広済鍼灸院調べ) |
---|
「良い姿勢」とはー音楽家としてのキャリアを長く保つためにー |
---|

フォーカル・ジストニアの鍼灸治療を受けられた方からのお声 |
---|
(患者様からのメールやお手紙の内容です。プライバシー保護のために一部内容を変更しました)
先週診ていただきましたKです。大変嬉しいお知らせで、あの時見ていただいた事がきっかけであれよあれよという間に右手の不具合に劇的な改善が見られまして、自分の手や指の使い方を見直した結果、この10年間の苦労と辛酸が嘘のように、引きつれが取れていき、週末の演奏ではやっと昔の自由を右手に取り戻しまして、久々に演奏する喜びを感じながらの演奏となりました。お客様にも喜んで頂き、自分にとって記念すべき週末となりました。これもひとえに先生の施術のお陰と心から感謝致します。勿論長い間気付かずにつけてしまったよくないフォームに起因する、かすかな右手の引きつりは少しはあるものの、驚くべきことに、これまでとは逆に、練習する度にその引きつりがなくなっていき、これと言う理想のフォームといいますか、動きや力配分に近付きつつあります。本当にありがとうございました。今後もこの調子で、いい方向にいい方向にと流れを向けて行きたいと思っています。
今日はご報告があり連絡させていただきました。治療していた指がだんだんと回るようになり、定期的な演奏が増えることになりました。少しずつですが地元の演奏活動の仕事も入り、急遽入ってしまった短期集中の生徒さんのレッスンを毎日のようにしています。東京に行ける時間がなくなってしまい、とても残念ですが、おかげさまでなんとか充実した日々を送っています。先生には一番辛い時期から手のことはもちろんの事、精神的なことも含め、本当によく相談に乗って頂き、誠に感謝しています。