音楽家のための鍼専門治療
The specialized treatment for musician
音楽家とスポーツ選手の筋運動はよく比較の対象にされるものですが, 両者は最高のパプォーマンスを引き出すために, 能力の限界まで速く複雑な筋の協調運動を行う点での共通点をもっています. スポーツ選手は正しい動き(身体に負荷のかからない動き)についての理解を自らの肉体に対する関心やトレーナー等に指導されることで深めていますが, 演奏家にはこれらの基本的な知識が不足している場合があります. そのため, 演奏中の不良姿勢や, 肉体的な限界に気づくことが遅れがちで, 後に筋や神経の症状を発展するケースが多く見られます.
以下の疾患が音楽家にとって多く発症するとされています
- 局所性ジストニア
- 使い過ぎ症候群
- 絞扼性神経障害
- 反復性巧緻障害
- アロディニア
- 腱鞘炎
局所性ジストニア(フォーカルジストニア, musician's cramp)
局所性ジストニアは,演奏時に不随意な筋活動が生じるために, 演奏行為に支障をきたす病態のことをいいます. 症状の特徴としては, 例えばピアニストの場合, 鍵盤を叩く時に速い指の動きができない(巧緻動作障害), また指に力が入らないことから垂直方向への鍵打が思うようにできなくなるといった症状を訴えることが特徴です.
局所性ジストニアでは演奏以外の日常動作では症状が全く現れないことが多くあります. 楽器演奏ではに正確さとスピードを伴った複雑な巧緻運動を行う必要があり, そのための運動ストレスは非常に大きなものになります.
原因
ピアノ演奏にみられるような過剰な手指の巧緻動作がその原因と考えられています.
過度の練習などによる特定の動作の過剰な反復は, 神経伝達機能に過剰な負荷をかけます. 神経の伝達とは配線の中を電気が流れるようなものであり, その電流が一定量を超え過剰に流れるとショートしてしまいます. このような状態になると演奏時にはたらく筋は収縮や動作に拮抗する筋の動きのタイミングが障害されます. このようなことは日常動作や, よほどの反復動作を行わない限り発生しないものです.
コンサートやコンクールを控えたための過度な練習を繰り返すことは, スポーツのような全身運動とは異なり, 前腕の筋のみを使う動作であるため, 全身運動のような疲労感を覚えることがありません. そのため, 疲労に気づくことがあまりないため, 神経が疲弊してしまうことがあります.
音楽家の多くが幼少期より特殊技術と巧緻動作を必要とする一定レベル以上の動作を長期間行っていますが, このような反復運動の継続性がジストニアの発症に大きく関係しているといわれています. (音楽家の8%が罹患しているとの報告もあります)
局所性ジストニア 西洋医学における治療法
主に異常な筋収縮を起こしている筋に対して行う治療法には以下のものがありますが, 神経疾患には原因がわからないことが多く, 医学的に対応が難しいとされています.
また以下の治療法は眼瞼痙攣等には有効とされていますが, 高度の巧緻性を要する演奏行為には支障をきたすことも報告されており, 決定的な効果があるとは限りません.
・ボトックス(ボツリヌス注射)
・MAB(mascle afferent block)療法:リドカインとエタノールを注射し筋感覚神経をブロックする
・定位脳手術
・反復磁気刺激
鍼治療での対処
ジストニアに限らず職業的な神経疾患に対して鍼治療は西洋医学的な治療法と比べて有効な治療法とされてます. 当院ではピアニストをはじめ, ギター奏者等, 音楽家への治療実績が多く、いずれも改善効果を上げております. 鍼治療では測定機器により筋や神経の異常興奮部位を探索し, その部位への鍼施術を行います. またジストニアには外傷歴や過度の肉体的なストレス, 精神的なストレスもその発症に関与している場合もあり, 手指や前腕部といった局所だけではなく全身の状態を改善する東洋医学的な治療も行っております.
「良い姿勢」とはー音楽家としてのキャリアを長く保つためにー
ほとんどの演奏は主に上肢を用いて行われますが, その上肢の運動を安定させるには胸郭や脊椎の骨格筋が重要なはたらきをしています. 骨格や筋はすべて互いに影響をしあっており, これらの運動に過度の緊張や負荷がかかりすぎることが障害(傷害)の原因となります.
このメカニズムはスポーツにおけるスポーツ外傷と同じように発生します. よく「良い姿勢を保て!」といわれますがその「良い姿勢」とは何でしょうか?演奏家にとっての「良い姿勢」とは骨格筋にかかる機械的なストレスを最小限にしながら, 演奏における反復運動に負担をかけない姿勢です.
しかし, 習慣となった悪い姿勢は矯正することが難しいのが現状です. 演奏家の誰もが経験していることではあると思いますが, 優れたパプォーマンスを引き出す瞬間は無意識の状態に陥ることがあります. 普段から良い姿勢を心がけていないと悪い姿勢を体が認識してしまい, それが継続することで演奏技術に悪影響を与える疾患の原因となるため避けなければならないことです. 当院では導入していることですが, 演奏家としてのキャリアを長く保つために定期的に演奏姿勢を第三者の目からチェックしてもらうことが必要です.
東京都・港区 痛み,不妊,花粉症の鍼灸治療なら 広済鍼灸院 院長 伊藤久敬
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