交通事故とむち打ち損傷(traumatic cervical syndrome) |
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症状の経過としては事故の直後よりも2、3日経過した後に痛みが強くなったり、腕や首のしびれ等の症状が出る特徴があります。
症状の特徴 |
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交通事故など受傷直後にむち打ち損傷として特有の症状を呈するものは少なく、数時間後から翌日に出るものが全体の約8割をしめ、24~48時間後に出るものが約1割また、1~3週間後に発症するものもあります。
症状の特徴としては、検査所見と自覚症状が一致しない場合が多くあります。CT、MRIなどの画像検査などで異常がないと言われても、ご自身には不快症状や不定愁訴を持つ場合があります。事故の衝撃は予想外に骨格、及び筋にストレスを与えます。また、画像所見で異常が見つからないレベルでも神経学的な異常が存在する場合も多くあります。そのため、事故後かなりの時間が経過した後でも、頚の痛みや肩こり、頭重感、全身の倦怠感、腰痛症状などや、頸椎や腰椎といった脊椎(背骨)へのダメージにより自律神経症状が出る場合もあります。このようなケースでは時間が経過しているため、医療機関を受診しても事故との因果関係を証明することが困難になる場合があります。上記の運動障害や神経機能障害以外に、うつ状態、不眠などの精神症状や耳鳴などの耳鼻科的症状、めまいなどの平衡機能障害などの多彩な症状を訴えることもあります。
受傷時に特別な症状がなくともむち打ち損傷を否定することはできず、少なくとも数日間安静を保ち経過を観察する必要があります。むち打ちは10km/h未満の衝撃でも起こることがあるため、必ずしも受傷直後や初期に症状がなくても徐々に症状が出現することもあります.
近年のむち打ち症に関する知見 |
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むち打ち症はご本人が辛い症状をお抱えでも、検査所見から異常が見つからないことから症状を他者に理解してもらえないことが多くあります。近年はスポーツ医学や身体科学の面から頚椎捻挫や脊椎の打撲へのアプローチも進んでいます。頚椎は頭部に近接し、頚椎からの神経は手足のみならず全身にその影響を及ぼしているため、頚椎や脊椎に強い衝撃が加わることで自律神経系にもダメージを与えることが場合があります。
理由としては頭蓋内で脳を保護している髄膜という膜状の組織がありますが、その髄膜は後頭骨の大後頭孔と頸椎2、3番(C2・C3)の内側に付着し、脊髄神経を包んでいます。また、左の図でもおわかりのように自律神経は脊髄から枝分れしている神経であるため、受傷部位と関係のない部位(神経系や内臓など)へ影響を及ぼすことがあります。以上のことから、事故の衝撃は様々な不定愁訴が生じると考えられます。
後頭部と頚椎を繋ぎ止めている筋(後頭下筋群)が牽引されることも自律神経系に悪影響を及ぼすこともあります。検査所見に異常がないのにもかかわらず、事故後から原因不明の痛み、めまいや倦怠感などの症状が長引くことがありますが、これらは自律神経系のはたらきが失調した結果起こるものと考えられています。
「頸性めまい」について |
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頸性めまいの原因として、小脳や脳幹を栄養する椎骨脳底動脈の血流障害によって起こることが考えられています。くびの骨や筋に急性的、慢性的なな負荷がかかることで、頚椎が変形し、血管が圧迫されると考えられています。このような状態は「椎骨脳底動脈血流不全症」と言われています。
頚椎捻挫、むち打ち症の鍼灸治療 |
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自律神経測定器
当院の症例では交通事故後遺症に対し鍼灸治療はとても効果的であり、交通事故後の痛みや不定愁訴に対して頚椎のみならず、後頭下筋群および脊椎全般への施術を行うことで、より効果的な治療を行っております。頚椎捻挫、むち打ち治療に際しては、自律神経測定器を用いることで、痛みや不定愁訴の問題となっている筋を正確に特定し、自律神経症状などを伴った慢性的な症状への精度の高い治療を提供しております。
最も大切なことは早めの治療です。交通事故により、特に頚に障害を持たれた場合には、初期には症状があまりなくても、早期から鍼灸治療を行うことによって、後遺症を残さずに健康な状態に戻る可能性が大きくなります。事故後の痛みに関するご質問等がございましたら、メールもしくはお電話でお気軽にご相談下さい。
むち打ち症の分類
頚部捻挫型 |
頚椎を支持している筋や靱帯、関節包の損傷で主に頚部、肩、背中の疼痛があらわれ、とくに後屈時に運動制限が現れます。 |
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神経根型 |
頚椎に歪みができると神経の通り道が狭くなり、頚椎から出る神経が圧迫され、特に上肢の放散痛・肩甲骨内縁に沿う放散痛がその特徴です。首の痛みや頭痛、腕のしびれ、痛み、だるさ、筋力低下、知覚鈍麻、首や肩の関節の運動制限などが現れます。また、四肢に症状が現れることもあります。 |
バレ・リュー症候群型 |
バレ・リュー症候群型(Barre-Lieou)では慢性期むち打ち損傷の約30~40%に認められると言われ、頸部交感神経節と血管、斜角筋やその他の頸部筋群の過伸張と断裂・損傷により引き起こされるものです。後背部交感神経の損傷により、血流が低下することで、首の痛み、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、顔の痛み、のどのつまり感、視力障害、食べ物が飲み込みにくいなどの様々な症状が現れます。 |
混合型 |
頚部捻挫型、神経根型、バレ・リュー症候群型の症状が混合して出るものもあります。また、その重症度により椎間関節症候群(facet syndrome)や脊髄障害が後遺症として出現することもあります。 |
交通事故後の対応について |
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交通事故の傷害に対し、鍼灸治療は交通事故保険が適用されます。交通事故によるむち打ち症等治療には自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)での治療が可能です。示談前であれば、自賠責保険によって当院での治療費がカバーされますので自己負担はありません。(交通事故の示談後でも同意書の発行により各種保険治療が適用されますのでお問い合わせ下さい)
医療機関への通院も可能ですので自賠責保険での治療をご希望の場合には、ご予約の際にお知らせください。