痛み,不妊,音楽家の鍼灸治療
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広済鍼灸院 
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術後痛,開胸術後疼痛症候群 Postoperative pain
 

 手術後の術瘡部および近傍の体表面及び皮下組織は、侵襲後による組織変性(ケロイドなど)や、神経的な問題や血液循環の悪化により、慢性的な痛みが発生することがあります。鍼は結合組織の血液循環改善や硬結の緩和に働きかけることで疼痛を緩和することができます。

 鍼灸は痛みに対して、非常に効果が高いことはよく知られていますが、最近の研究から明らかになった鍼の鎮痛作用の機序を以下に記します。

  • 外周神経への影響:周囲神経の痛覚神経の痛み信号の伝達を遮断することによって、脊髄の傷害性刺激信号に対しての反応を抑制する。
  • 中枢神経への影響:痛み信号の伝達及び感受を抑制し、脳の鎮痛システムを興奮することによって、鎮痛効果を発揮する。
  • 中枢神経の伝達物質への影響:脳内エンドルフィン(脳内鎮痛物質)をを増加させる作用によって、鎮痛効果が得られる。

 国立がんセンター緩和ケア科の研究によると鍼を受けた患者さんは術後に鍼治療を受けなかった患者さんと比べ、術後の鎮痛薬の投与量、回数が有意に少なくなったとの報告があります。WHOによる鍼灸適応疾患の中では、術後疼痛と抜歯疼痛がリストアップされております。

術後痛における鍼治療のメリット

 通常医療において術後痛への対処は鎮痛剤を用いることが一般的です。鎮痛剤にはいくつかの種類かありますが主に非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)が用いられています。これらの薬には有効性もありますが、長期間の服用による副作用の心配があり、胃腸障害や消化管出血などの症状が発症することが指摘されています。また、重篤な症状に至らなくとも鎮痛剤服用による食欲不振がおこることにより、栄養吸収が悪くなることで術創の治癒や体力回復、社会復帰などにも影響する場合があります。
 鍼治療では術後痛をかなり良好な成績で鎮痛効果を与えることが出来ます。そのため、上記の副作用などの心配がありません。術後の回復で最も重要なことは体力の回復です。そのためには栄養の摂取の状態を良好に保たなければなりません。鍼治療は痛みを押さえながら胃腸障害の心配がないといったメリットがあるため、食事を通常通りに摂取することで体力の回復が一段と早まることで早期の社会復帰が可能です。
当院での術後痛鍼治療の症例

開胸術(心臓弁膜症)術後の後遺症緩和

弁膜症(大動脈弁狭窄)による生体弁置換術を受け、10日後退院。自宅にて静養するも背部痛、不眠、胃の痛み、便秘、術創部痛などの症状に悩まされ当院にて鍼治療を開始。特に背部痛、鈍重感に悩まされている症状を訴えておりました。鍼治療開始後の当日は退院後初めて睡眠が取れ背部痛症状の緩和傾向が見られました。(VAS_8)以降週2回のペースにて鍼治療を継続、週単位ごとにVASレベルが2~3の減少が見られ、胃痛、消化器症状、不眠は消失し、約1ヶ月後には背部痛はVAS2に減少しました。

開胸術後には自律神経失調による症状である食欲不振、不眠、手足の冷え、体力減少などを自覚することが多々ありますが、この方も現在自律神経症状の改善を目的に週1~2回のペースで鍼治療を継続しております。(2017.01.23現在)

開胸術(心筋梗塞)後の疼痛緩和

胸骨切除のため術瘡部に約数年間にわたり疼痛がみられ、鎮痛剤を処方されていましたが、鎮痛剤の副作用による消化器症状の出現により在宅ドクターより紹介を受け週1回のペースで鍼治療を開始。鍼治療開始後より痛みの閾値が下がることを確認。VASによる10段階評価(10が痛みレベル最大、0が無痛)で疼痛レベルが8から3に減少。1ヶ月後には1~2に疼痛レベルが下がった。この方は座位時の姿勢保持に胸の術瘡部に痛みを感じていましたが、鍼治療により長時間の座位姿勢でも胸の痛みを気にすることなく現在は日常生活を送られています。

開胸術(肺がん)後の疼痛緩和

肺がん手術後より胸部疼痛症状がありました。また術瘡部付近一帯に肋間神経痛様の症状があり夜間疼痛により眠れないといった症状がありました。同時にうつ症状も併発していることから鎮痛剤とともに抗うつ剤も処方されていました。鍼治療開始から徐々に疼痛閾値は減少し始め約3ヶ月後時点では痛みレベルは3~4に減弱。よく眠れる日も増えました。

股関節人工骨頭置換術(BHA)後の疼痛

術後より鼠径部痛が出現し座位、歩行時に疼痛を感じていました。この方は発痛部位に人工骨頭に関する問題がなく股関節周囲筋(内転筋群)に過度の緊張がみられることから、緊張緩和と疼痛軽減を目的に鍼治療を行った。鍼治療後は緊張が緩和された状態と痛みにより関節可動域に制限がみられたが、鍼治療の回数を重ねるごとに徐々に関節可動域も上昇した。治療開始3ヶ月後時点で痛みレベルは7から2に減少しました。

脛骨および腓骨複雑骨折後の痛み

交通事故による転倒により脛骨および腓骨を複雑骨折。骨接合術を行った後、術瘡付近のしびれと痛みを主訴として来院されました。骨の癒合が確認された後、ギブスを脱着しながら筋固縮の予防と血行改善を目的に鍼治療を開始。鍼治療を開始以降、しびれの感覚と痛みレベルは減少した。

顔面部皮膚切開術後(美容系)の神経痛

リフトアップ術による頭皮縫合部位の神経痛に悩まされている方(60代女性)でした。術後約1年を経過しておりましたが、寒冷期になり神経痛がひどく睡眠も取れない状態となり鍼治療を開始しました。縫合部位の血行障害及び緊張緩和を目的に施術を行い、開始時(VAS9)から2ヶ月後にはVAS2に疼痛レベルは減少。翌年は別の症状で来院されましたが、縫合部位の神経痛症状は消失したとの報告を受けました。

開胸術後の鍼治療例
その他の症例もございますのでお悩みの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。